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重量物がつま先に落下した場合に想定される衝撃エネルギーから推奨される安全靴の選択について,次に示す。
表1 重量物取扱い作業に対応する安全靴の選択
重量物がつま先に落下した場合に想定される衝撃エネルギー | 推奨される安全靴の作業区分 | 選択理由 |
---|---|---|
200 Jを超える | U種 | 誤って重量物をつま先に落下させた場合の衝撃エネルギーが200 Jを超える場合には,落下物の形状及び落下位置によってはつま先部を完全に防護することは難しい面があるが,少しでも衝撃を軽減させるために,U種の着用を推奨する。 |
100 Jを超え200 J以下 | U種 | 衝撃エネルギーが100 Jを超え200 J以下の場合には,U種の安全靴を推奨する。 |
70 Jを超え100 J以下 | U種又はH種 | 衝撃エネルギーが70 Jを超え100 J以下の場合は,U種又はH種の安全靴から選択する。 U種又はH種のいずれを選択するかは,他の必要な付加的要件による。 |
30 Jを超え70 J以下 | U種,H種
又はS種 |
衝撃エネルギーが30 Jを超え70 J以下の場合は,U種,H種又はS種の安全靴から選択する。 U種,H種又はS種の選択では,他の必要な付加的要件によって選択すればよいが,我が国の安全靴の市場ではS種の安全靴が最も普及しているため,必要な付加的要件を備えている安全靴の種類が多く,選択は容易である。 |
30 J以下 | U種,H種
S種又はL種 |
衝撃エネルギーが30 J以下の場合は,S種又はL種の安全靴から選択する。 U種,H種,S種又はL種の選択では,他の必要な付加的要件によって選択すればよいが,我が国の安全靴の市場ではS種の安全靴が最も普及しているため,必要な付加的要件を備えている安全靴の種類が多く,選択は容易である。 |
・垂直の自然落下条件における衝撃エネルギーについては,次の計算式を使う。 衝撃エネルギー(J)=落下した重量物の質量(kg)×落下高さ(m)×9.8 |
(JIS T 8101:2020附属書JAを引用)
作業用途からみた特殊性能の安全靴の選択については,次に示す。
表D.2 特殊用途に対応する安全靴
特殊作業用途 | 推奨される安全靴の付加的要件 | 選択時の留意事項 |
---|---|---|
作業場所の床面に突起物がある場合 | 耐踏抜き性 | 耐踏抜き性には限界があるため,飛び降りなどはしてはならない。 |
長時間の立作業又は歩行作業がある場合 | かかと部の衝撃エネルギー吸収性 | かかと部の衝撃エネルギー吸収性は,疲労防止に有効である。 |
つま先部だけでなく,甲部にも重量物の落下の可能性がある場合 | 足甲の保護性(足甲プロテクタの使用) | 足甲プロテクタは万能ではなく,衝撃エネルギーを先芯に分散させて衝撃を和らげるものであり,あらかじめ甲部に重量物を落とすことを前提に使用してはならない。 |
作業場所の床面が滑りやすい場合 | 耐滑性 | 耐滑性の程度は動摩擦係数で規定されており,水,油場の滑りには参考となるが,氷,粉のある床面では動摩擦係数が高い安全靴であっても滑る危険があるため,使用する場合には耐滑性の効果を確認してから使用することが望ましい。 |
作業場所で水を使用する場合,又は水場若しくは雨天作業の場合 | 耐水性 | クラスIの革製安全靴には限界があり,完全な耐水性を望む場合は,クラスIIの総ゴム製又は総高分子製安全靴の着用を推奨するが,近年透湿フィルムを靴内部に貼って耐水性を向上させたクラスIの革製安全靴もあり,用途に応じて選択することが望ましい。 |
作業場所に突起物があり,かかとをぶつけるような危険性がある場合 | かかとの保護性 | 靴のデザインでタイプAは避け,タイプB以上を選択することが望ましい。また,当て革などの仕様も有効である。 |
作業で刃物を使用する場合,又は鋭利な突起物のある場所で作業する場合 | 耐切創性a) | 一般的にゴムよりも繊維層をもつ革の方が耐切創性は良いので,クラスIの革製安全靴を選択することが望ましい。 |
変電所,高圧鉄塔の下などの強電界において作業する場合 | 導電性 | 導電靴は,強電界下の人体帯電を防止する用途で使用する靴であり,感電のおそれのある作業には使用してはならない。 |
有機溶剤,ガスの取扱い,半導体の取扱いなど,体に静電気がたまることによって爆発又は電子素子の破壊が生じる危険性がある場合 | 静電気帯電防止性b) | 作業場所の環境で取り扱う物質の最小着火エネルギーに応じて,特種静電靴及び一般静電靴を選択する。 また,特に電子部品の取扱いでは作業場所の湿度環境に応じて,C1,C2又はC3を選択することが望ましい。 |
低〜中電圧での作業で,感電の危険性がある場合 | 絶縁性 | 電気的等級によってI-0及びI-00があるため,用途による使用電圧の確認が必要である。 |
炉前作業などの床面の温度が150℃以上の高温となる場所で作業する場合 | 靴底の高温熱伝導性(耐熱靴の選定) | 靴内部の足の下の温度が40℃を超えると,作業を続けることで低温やけどの危険性があるので,一定時間で作業を止め,靴内部を冷やさなければならない。 |
冷蔵庫,冷凍庫内の作業などの床面の温度が極めて低温な場所で作業する場合 | 靴底の低温熱伝導性(防寒靴の選定) | 長時間足が低温状態で作業していると,霜焼けなどの症状が生じる場合があるので,一定時間で作業を止めなければならない。 |
床面の温度が80℃以上の高温となる場所での作業 | 表底の耐高熱接触性(ポリウレタンの使用は注意) | 表底にポリウレタンを使用した安全靴では熱による靴底の溶解,変形,又は耐久性の低下が生じるおそれがあるので,使用する場合は靴底の変化に注意を払うことが望ましい。 |
作業場所で有機溶剤又は薬品を使用する場合 | 甲被及び表底の耐燃料油性 | 甲被及び表底に耐燃料油性があっても全ての溶剤,薬品に耐性があるわけではないので,使用に当たって,溶解,変色などの劣化の兆候が見えた場合は,直ちに使用を中止する。 |
注a) JIS T 8125-3参照。 b) JIS T 8103参照。 |
作業用途からみた特殊性能の作業靴の選択については、次に示す。
表D.3 特殊用途に対応する作業靴
特殊作業用途 | 推奨される作業靴の要件 | 選択時の留意事項 |
---|---|---|
作業場所の床面に突起物がある場合 | 耐踏抜き性 | 耐踏抜き性には限界があるため,飛び降りなどはしてはならない。 |
長時間の立作業又は歩行作業がある場合 | かかと部の衝撃エネルギー吸収性 | かかと部の衝撃エネルギー吸収性は疲労防止に有効である。 |
作業場所の床面が滑りやすい場合 | 耐滑性 | 耐滑性の程度は動摩擦係数で規定されており,水,油場の滑りには参考となるが,氷,粉のある床面では動摩擦係数が高い安全靴であっても滑る危険があるため,使用する場合には耐滑性の効果を確認してから使用することが望ましい。 |
作業場所で水を使用する場合,若しくは水場又は雨天作業の場合 | 耐水性 | クラスIの革製作業靴には限界があり,完全な耐水性を望む場合は,クラスIIの総ゴム製又は総高分子製作業靴の着用を推奨するが,近年透湿フィルムを靴内部に貼って耐水性を向上させたクラスTの革製作業靴もあり、用途に応じて選択することが望ましい。 |
作業で刃物を使用する場合,又は鋭利な突起物のある場所で作業する場合 | 耐切創性(注1) | 一般的にゴムよりも繊維層をもつ革の方が耐切創性は良いので、クラスTの革製作業靴選択することが望ましい。 |
変電所,高圧鉄塔の下などの強電界において作業する場合 | 導電性 | 導電靴は強電界下の人体帯電を防止する用途で使用する靴であり,感電のおそれのある作業には使用してはならない。 |
有機溶剤,ガスの取扱い,半導体の取扱いなど,体に静電気がたまることによって爆発又は電子素子の破壊が生じる危険性がある場合 | 静電気帯電防止性(注2) | 作業場所の環境で取り扱う物質の最小着火エネルギーに応じて,特種静電靴及び一般静電靴を選択する。また,特に電子部品の取扱いでは作業場所の湿度環境に応じて,C1,C2又はC3を選択することが望ましい。 |
低〜中電圧での作業で,感電の危険性がある場合 | 絶縁性 | 電気的等級によってI-0及びI-00があるため,用途による使用電圧の確認が必要である。 |
炉前作業などの床面の温度が150℃以上の高温となる場所で作業する場合 | 靴底の高温熱伝導性(耐熱靴の選定) | 靴内部の足の下の温度が40℃を超えると,作業を続けることで低温やけどの危険性があるので,一定時間で作業を止め,靴内部を冷やさなければならない |
床面の温度が80℃以上の高温となる場所での作業 | 表底の耐高熱接触性(ポリウレタンの使用は注意) | 表底にポリウレタンを使用した作業靴では熱による靴底の溶解,変形,又は耐久性の低下が生じる恐れがあるので,使用する場合は靴底の変化に注意を払うことが望ましい。 |
作業場所で有機溶剤又は薬品を使用する場合 | 甲被及び表底の耐燃料油性 | 甲被及び表底に耐燃料油性があっても全ての溶剤,薬品に耐性があるわけではないので,使用に当たって,溶解,変色などの劣化の兆候が見えた場合は、直ちに使用を中止する。 |
注記 あくまで作業靴としての選択方法であり,つま先部の防護性能はないので注意。 注1 JIS T 8125-3参照 注2 JIS T 8103参照 |
2020年3月に改定に改定されました安全靴JIS規格について、今回の改定は大幅な企画構成及び内容の変更となっており、その概要を次に説明する。
1.規格の構成
現行JIS T 8101安全靴の規格を「試験方法」と「安全靴」の2つに分け、新規に「作業靴」を追加する。
⇒ JIS T 8101 安全靴 | 〜 | つま先部に硬質の先芯を装着し、つま先部の防護性能をもつ靴の要求事項と規格値を規定したもので、ISO 20345 個人用保護具−安全靴 及びISO 20346 個人用保護具−保護靴に対応 |
⇒ JIS T 8107 試験方法 | 〜 | 規格の試験方法を抜き出し規定したもので、ISO 20344 個人用保護具−靴の試験方法に対応 |
⇒ JIS T 8108 作業靴 | 〜 | つま先部に硬質の先芯を装着しないが、各種作業用途に対応した性能をもつ靴の要求事項と規格値を規定したもので、ISO 20347 個人用保護具−作業靴に対応 |
2.種類の追加
ユーザーが作業に適合する種類、要件を確認できるように、種類、要件を追加した。
⇒ | 現行の安全靴のJIS規格に規定したH,S,L種は残し、新たにISO規格に対応したU種(耐衝撃性200J)を追加 |
⇒ | 作業によってそれらの中から必要な要件を選択できるように付加的性能要件を追加。(耐熱伝導性、耐切創性など) |
3.作業靴の規定を追加
つま先部に硬質の先芯が装着されていない靴であっても、
特殊な作業用途に使用されるものは作業靴として規定した。(一例を示す)
⇒ | つま先の防護性は不要だが耐滑性が必須の作業靴 〜 耐滑靴 |
⇒ | つま先の防護性は不要だが低温での耐熱伝導性が必須の作業靴 〜 防寒靴 |
⇒ | つま先の防護性は不要だが低圧での靴底からの感電防止が必須の作業靴 〜 低圧感電防止靴 |
4.ISO規格に準拠
改訂JIS規格(3部構成)はISO規格(4部構成)に対応させたものであり、我が国の作業形態に適合する要件、試験方法は基本的に取り入れたが、欧米との労働環境の違いによりMOD(部分一致)とし、ISO規格と全く同じとはしていない。
○防災靴ガイドライン
今般、災害時に着用する活動靴(防災靴)について、ガイドラインを策定しました。
防災時に着用する活動靴
(防災靴)についてのガイドライン (約1.3MB) |
防災用踏み抜き防止
中敷規格:2018 (約455KB) |
○ 安全靴のJIS規格の改正と作業靴のJIS規格の制定についての小冊子
安全靴のJIS規格の改定と作業靴 |
安全靴のJIS規格の改訂と作業靴 |
○ 転倒予防のために適切な「靴」を選びましょう
厚生労働省・中央労働災害防止協会 |
○ 職場に合った安全靴・作業靴を選ぶためのアンケート
職場に合った安全靴・作業靴 |